2021年11月14日(13日閉会予定から延期)に、COP26が閉会しました。今後、環境省を始めとして、COP26での成果や、それを受けた政策が出てくると思います。ここでは、主な合意事項と、それらが中小企業に与える影響について考えてみます。
主な合意事項
- 気温上昇を1.5℃までに抑える努力の追求
- CO2排出削減対策の取られていない石炭火力の段階的削減へ努力
- 先進国から途上国への資金援助(2020年まで年1000億ドル)の速やかな達成と追加の援助検討
- パリ協定の市場メカニズムのルールの完成
- 必要に応じて22年末までに2030年の削減目標(NDC)の再検討
ポイント
1.は5.とリンクしますが、日本は今回のCOP26に合わせて、これまでの「2030年に2013年比で26%削減」目標から「同46%削減」目標に修正済みです。エネルギー基本計画なども修正済みですので、これら計画に従って政策が決まっていくと思われます。カーボンプライシングの議論が盛んになると予想します。
ただし、「気温上昇を1.5℃までに抑制する努力」に対して、日本がすべき貢献は63%削減と算定されている(Climate Action Tracker)ので、世界からみると物足りない印象です。この数字はバックキャスティングで決められたのではなく、「小泉大臣のイマジネーション&国内事情の積み上げ」なので仕方ない面もあります。
2.について、中小企業に直接影響を与えることは少ないと思います。しかし、現時点では発電コストの低い石炭火力発電が難しくなると、今後、電気料金の上昇などが影響が考えられます。
3.については、政策の問題ですが、途上国での開発をビジネスチャンスと捉えると、情報を集める価値はあると思います。
4.について、「二国間クレジット制度(JCM)」などは規定されたルールに従って運用されてきているので変化はないと考えられます。ただ、ルールが完備されたことにより、これら制度の活用が活発化する可能性はあります。
解説と見どころ
目標値を63%削減(1.5℃対応)に見直すかの議論もあるかもしれませんが、そもそも46%@2030年の達成をどうするかが大きな課題です。下の図は、2013年、2018年、2019年の排出実績値と2030年目標値をプロットしたグラフです。
このグラフを見ると、このまま進めば達成可能な感じがします(このグラフから、えいやで46%を決めたのか!?)。しかし、2013年はリーマンショックからの経済回復や原発の停止などで温暖化ガス排出量が極大値の年で、削減の余地が大きかった状況です。今後、このペースで削減していくのは相当の努力(投資や技術開発)が不可欠です。
具体的に考えられる政策としては、以下のものが考えられます。
- カーボンプライシング
- 大企業へSDGsの延長でカーボンニュートラルを指導
- 原発の再稼働
- 再エネ投資への優遇
- 資源循環などエネルギー以外の分野に対するカーボンニュートラルの強化政策
1から5のどれもが中小企業の経営に影響を与えそうですが、直接的なビジネス観点から一つ例をあげると、2.の波及効果として、取引先に対してもカーボンニュートラルを要求する可能性が高くなります。すでに、ホンダなどはサプライチェーンでのカーボンニュートラルを始めて、主要部品メーカーに対し、二酸化炭素(CO2)排出量を2019年度比で毎年4%ずつ減らし50年に実質ゼロにするよう要請しているとのことです(2021/11/17日経朝刊)。
Appleなど海外のグローバル企業はすでに取引先に要求しているカーボンニュートラル対応ですが、今後は多くの国内企業との取引においても要求される可能性が高くなりそうです。現時点から自社事業を見直して、カーボンニュートラルの具体的な方法の検討に着手する必要があると思います。
関連URL
- 環境省COP26等報告
- 外務省COP26等報告
- 日本の評価(Climate Action Tracker)
- COP26のオフィシャルHP
- 環境省のCOP26関連HP
- 経産省の温暖化対策関連HP
- 外務省の気候変動に関する国際枠組関連HP
- JAPANパビリオンのHP
以上(2021/11/17)