今回は、マーケットインとプロダクトアウトについて、技術経営の視点で考えてみます。
マーケットインとプロダクトアウトの定義
ある辞書によると、マーケットインは「企業が生産・販売活動をする際に、消費者のニーズを満たす製品であることを最優先する考え方」であり、プロダクトアウトは「企業が生産・販売活動をする際に、消費者のニーズは無視し、生産者側の都合を最優先する考え方」となっています。マーケットインは正しく、プロダクトアウトは間違っているとのニュアンスが感じられます。
個人的には、マーケットインは「顧客の意見・ニーズを汲みとって製品開発を行うこと」、プロダクトアウトは「会社の方針や作りたいもの、作れるものを基準に商品開発を行うこと」が、技術経営を考える際には妥当な定義であると考えています。
技術経営から見たマーケットインとプロダクトアウトの捉え方
マーケットイン戦略は基本的に顕在化ニーズに対応する戦略といえます。顕在的なニーズに商品を適合させるので、ある程度は売れることが期待できます。
しかし、技術経営の面から見ると「持続的な優位性を発揮できる独自技術を所有しているか」、「先行する商品を大きく超えられるか」といった課題もありうるはずです。一般的に持続的な優位性を保つ技術開発には時間がかかるので、顕在化した市場ニーズに対して都合よく技術を持ち合わせている確率は高いとは思えません。
ただし、持続的な優位性を保つ技術が必ずしも必要ない状況、即ち、次のような商品や市場の特性の場合はマーケットインは適合すると思います。
- 極めて膨大で急成長している市場で、同じような商品が発売されていても需要に供給が追いつかないような状況が長く続く
ただし、近年では、一気に過当競争となり、価格の急落が進む場合が多い(コモディティ化)とも言われています。
一方で、プロダクトアウトはどうでしょうか。独自技術を顧客ニーズに結びつけるための商品コンセプトの創造がなければ、企業の技術エゴが目立つ、売れない商品となります。
つまり、独自技術を(コア技術)を顧客価値に結びつけるための創造的な商品コンセプトを構築する能力が必要条件となり、これは保有する組織能力に左右されると考えられます。
さて、技術経営において、利益を継続的に上げる必要条件は、「真似をされない独自技術」と「顧客ニーズへの合致」の両方を実現することです。この場合、プロダクトアウト戦略の方が可能性が高くなるとも考えられす。
なぜなら、真似されない技術を作り出すには時間がかかります。一方で、潜在ニーズの掘り起こしは簡単ではありませんが、時間をかけて技術的な優位性を積み上げていくように時間がかかるものではないと考えられるからです。
また、「持続性」の中で解説予定の「コア技術戦略」においては、プロダクトアウト戦略をいかに成功させるかが肝になります。
参考
- MOT[技術経営]入門、延岡健太郎著、日本経済新聞出版
- 技術経営について考える(6)
以上(2022/5/27)