「令和5年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が公開されました
経済産業省 資源エネルギー庁より「令和5年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が公表されました。
概要
福島復興の進捗
- 2023年8月、「ALPS処理水」の海洋放出を開始した。放出前後でもモニタリングを実施し、安全に放出されていることが確認されている。放出は国際原子力機関(IAEA)も国際安全基準に合致していると結論づけている。
- 「帰還困難区域」のうち、「特定復興再生拠点区域」の避難指示を2023年11月までに全て解除した。また、避難指示解除の取組を進めていく「特定帰還居住区域」制度を2023年6月に創設し、計画の認定等を進めている。
- 福島浜通り地域における新産業の創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」についても、2023年4月に司令塔となる中核的な拠点として「福島国際研究教育機構(F-REI)」を設立する等、取組が進展している。
カーボンニュートラルと両立したエネルギーセキュリティの確保
- ロシアによるウクライナ侵略に加え、中東情勢の悪化により海上交通の要衝である紅海の通航量が半減し、干ばつ・水位低下によりパナマ運河の通航量も4割減少した。サプライチェーン全体の観点から、「エネルギーセキュリティの確保」が重要な課題となっている。
- 2022年に急騰した燃料価格は下落したものの、石炭や天然ガスの市場価格は2010年代後半の2~3倍の水準となっている。世界の半分以上の石炭を生産・消費する中国による石炭輸入の拡大等もあり、今後の価格見通しは依然不透明である。
- 世界的な脱炭素の進展によるLNG等の上流部門への投資減少等の課題に加え、GX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により日本の電力需要が増加する可能性がある。
- 日本は、燃料価格高騰×円安で化石燃料の輸入額が2年間で22兆円以上増加し、過去最大の貿易赤字(年間20兆円超)となった。価格高騰リスク等を根本的に解決するには、省エネや脱炭素エネルギーへの投資促進策等を通じた、エネルギー危機に強い需給構造への転換が必要である。
GX・カーボンニュートラルの実現に向けた課題と対応
- 世界全体の温室効果ガスの3%を排出している日本は、2030年度の46%削減目標(2013年度比)に向けて、着実に削減が進捗している。
- GX実現に向けた官民連携の投資競争が世界中で加速し、日本も2023年7月に「GX推進戦略」を策定、同年12月には「分野別投資戦略」をとりまとめた。水素等・CCSの法整備等、投資促進策の具体化が進み、日本の官民GX投資は「実行」フェーズに突入している。
- COP28の決定文書では「世界全体で再エネ発電容量3倍/エネルギー効率改善率2倍」を進めること等が記載されたほか、気候変動対策として「原子力」が初めて明記された。さらに、日本は「原子力3倍宣言」にも賛同している。
- 日本の取組は、化石燃料に依存し、成長著しいアジアのGXにもつながる。「アジア・ゼロエミッション・共同体(AZEC)」の取組はその架け橋である。日本はGX技術等を通じて、アジア、そして世界のGXに貢献していく。
関連情報
以上(2024/6/7)